『ONE PIECE』100巻の書影©尾田栄一郎/集英社
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尾田栄一郎さんの漫画『ONE PIECE(ワンピース)』(集英社)にとって節目となる単行本100巻が9月3日に刊行された。平成9年の連載開始から25年目。「海賊王」を目指す少年とその仲間たちが繰り広げる冒険活劇は世代や国境を超え親しまれ、全世界の累計発行部数は前人未到の5億部に迫る。〝世界一の漫画〟は、来たるべき終幕に向けて駆け上がり続ける。
「永遠の少年」
主人公は「海賊王」を夢見る少年モンキー・D・ルフィ。剣士ゾロや航海士のナミら魅力的な仲間たちと海賊団を結成し、それぞれの長所を生かして強敵に立ち向かう、笑いあり涙ありの海洋冒険譚(たん)だ。現在は、侍などが登場し日本を想起させる国が舞台の「ワノ国編」が佳境を迎えている。
「今の話の進み方は、僕らの想像を超える速さ。終わりに向かっていると感じるし、毎週のように謎が明かされる驚きがあります」
週刊少年ジャンプ11代目担当編集者の岩崎湧治さんは現在の展開をこう語る。
同作は尾田さんの連載デビュー作。四半世紀にわたり、就寝時以外は基本的に漫画を描き続ける生活を送っているという。
「先輩の元担当編集とも話して感じたのは、尾田さんは『永遠の少年』だということ。24年もジャンプでトップを走っているのに慢心せず、常にアンテナを張り続けて面白いことを探して今も成長し続けている。『末恐ろしい子供』と表現した先輩もいます」
同作は27年、「最も多く発行された単一作者によるコミックシリーズ」としてギネス世界記録に認定。全世界の累計発行部数は、今年7月時点で4億9千万部を突破した。単行本は57巻から100巻まで44巻連続で初版300万部超え。「普通は100万部超えでも大ヒット。44巻連続というのは世界でも類を見ないのでは」。海外人気も高く、米ハリウッドでは実写ドラマが進行中。東京五輪では、同作が元ネタのパフォーマンスを披露した海外選手もいた。
あとは駆け上がるのみ
その一方、長期連載ゆえの苦しみも抱える。24年前の〝船出〟当初に読んでいた子供は大人になり、続きを追うのを中断した人も。新規読者の獲得も課題だ。だからこそ、「一度離れた人や、まだ読んだことがない人に『読んでみたい』と思ってもらう」ためのさまざまな取り組みを行う。漫画アプリで期間限定の無料公開を行うなどの大胆な施策も実施。「新規読者に加え、読者が戻ってきているのを感じる」という。
尾田さんは昨年、完結の見通しを「あと5年」と言及した。尾田さんの構想ノートでは、物語の道筋は既に決まっている。あとは「ストーリーをどう進めるか、試行錯誤を毎週繰り返している」という。
物語の随所に登場する「古代兵器」とは何か。ルフィの名前にも入っている「Dの一族」とは何者なのか。海賊王ロジャーが死の間際に言い残した〝ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)〟とは―。同作には、まだ多くの謎や伏線が存在している。
「尾田さんと話をしていても、ラストを見据えた話をしています。『ワノ国編』もここからがクライマックス。ラストを見据え、あとはもう駆け上がっていくだけです」
アニメも1000回節目
フジテレビ系で放送中のアニメ「ONE PIECE」(日曜午前9時半)は、今年11月21日に放送1000回の節目を迎える。アニメ版も現在、「ワノ国編」を放送中。制作する東映アニメーションの柴田宏明プロデューサーは「1000話という話が一つの集大成として楽しめる内容にしたい。1話から見続けてくれている方が見たらグッとくるような演出なども盛り込んでいければ」と意気込みを語る。
放送1000回に向け、ユーチューブの同作公式チャンネルで「ワノ国編」の無料配信を行うなどの企画を実施。現在はアニメと実写を交差させた全5編のショートドラマも配信中だ。柴田さんは「今後も見逃してほしくないエピソードが続きます。クライマックスに向け盛り上げられるよう、われわれも努力していきたい」と話している。
同作は平成11年に放送開始。フジで放送中のアニメでは、「サザエさん」「ちびまる子ちゃん」に次ぐ長寿シリーズとなっている。
筆者:本間英士(産経新聞)